2020/06/21
平成18年1月13日 午後1時20分より 議員会館にて
古谷)一昨年、東京青年会議所でNPOのフォーラムを開催させていただき、その際、加藤さんにもご出演頂きました。その後、また法人改革が進んできて、具体的な話にもなってきています。
最近の公益法人改革の動向についてお聞かせいただければと思います。
加藤)政府が懇談会をつくり、資生堂の福原会長をトップにして、1年半くらい検討してきました。ほぼ案が決まり、いま世間に公表してパブリックコメントを 求めているところで、だいたいそれが終わったはずです。3月の中旬には法案にして国会に出してくると思います。現在の骨子の段階で、自民党でも法案にし て、これから審議する予定です。私が、NPOの委員長を10年近くやってきたものですから、性格的には同じ国民の公益活動ということで、委員長になり、い ま審議しています。でも、あまりみんな興味がなくて、それほど多くの委員が集まってくるテーマではないのですが。
財団・社団制度というのはかなり古い制度で、とかくいろいろな批判もあり、すっきりした制度にすべきだということです。その根本は、日本でも、もっと公の ことを一般国民にやってもらいたいと、その仕組みは役所が全部仕切る、それぞれの担当省が仕切るという形ではなくて、「誰でも法人をつくってください」と いうように法人をつくることをたやすくしようと、その代わりそこの財団・社団が活動して、ある種の収入があった場合の税の減免とか、寄付をもらったときの 税制上の扱いを緩やかにしましょうという、日本にももう少しいろいろな人が寄付をして、一般の民間が公のために仕事をする場所、仕組みを広く作っていきま しょうというのが基本精神なんですね。
ここでいえることは、ひとつは、日本には私=民間の私人と、公益のために働く役人の、この2種類しかないというふうに決めてあったけれども、そうじゃない でしょうと。たとえば、江戸時代、大阪・難波ではみんなでお金出し合って橋を造ってしまう、道路を造ってしまうと。別にお上が作るものではなくて、自分た ちでそういうパブリックなことをやるという時代がありました。結局、大阪の淀川に掛かる橋は八百八橋あったとか言われますが、個人商人の名前がついている 橋などもあったのです。ですから、何も公共のことを役人でもない民間でもない、中間的な人ができるじゃないか、そこを認めていこうじゃないかという発想で すね。
それから2番目は、寄付の話なんですが、今までは、やたらめったら民間の個人や会社が寄付しないでくださいということでした。でも、「俺が稼いで儲 けたお金を文化活動に寄付してもいいじゃないか」と言われても、一回、それは税金でいただくんですね。そして、寄付先が国のためになる活動をしているかど うかは全部役人が判断するということで、もともと税金で入ってくるという判断があったので、税金の控除を受けるには特別公益増進法人になるとか、いろいろ 面倒な手続をとらなければいけないことが多かったのです。 今度は第三者機関を作ります、そこで、判断していきますというすっきりした形にして、寄付のしやすい形、必ずしも役所のひも付きでない判断というふうにす るということなんですね。その代わり寄付を受ける社団・財団はオープンにしてくださいということです。それぞれの社団・財団で働く職員が給与をとってもい い、何もボランティアで、手弁当でやれとはいいません。その代わりオープンにしてくださいというような形にしていくということです。
ちょっと欧米社会の、寄付によってみんなが地域活動をするようなそんな社会に近づいていくと思います。
古谷)私たちがNPOをつくるとなると、スタートラインから、もう、寄付の控除ができないわけです。つくりました、でも寄付の控除にはならないよと。ほと んどのNPOがそうであると思いますし、数少ないNPOが控除を受けられるに止まっています。それが寄付のあり方が変わる、控除が受けられるということに なると、出しやすくもなるし、受け手としてはありがたい話です。
加藤)いま、お話したのは、いわゆるNPO法人ではなくて、これまであった社団・財団についての取り扱いなんですが、ですからJCや医師会、共同通信社な んていうのはそのひとつですね。 もう一方、私が、一生懸命、過去10年間やってきたNPOについては、この社団・財団改革と一緒にしてしまって、基本的には設立は自由だけれども特別なも の以外は課税してしまうという扱いになるんじゃないかということで、1年半前くらいに大騒ぎになった。
古谷)なりましたね。
加藤)そのときのNPO団体から非常に強い抗議がありまして、NPO活動については別に扱うことにしたのです。今度のNPOについては別に扱います。現 在、NPO法人は26000くらいあって大変増えているのですが、税制優遇が受けられる団体は、認定法人というのですが、まだ、たった37なんですね。そ れで、みんなからカンパをもらって活動しようと思ったら、すぐ税金がかかってしまうということで評判が悪いし、認定法人にはなかなかならないじゃないか と。やろうと思えば膨大な書類を書かなければならないなんて冗談じゃないという声がありました。
これは役所側の壁も厚くて、過去5〜6年、大変な運動をし ておったのですが、今年は税制面でひとつ大きな進歩がありました。これまでは、認定法人というのは、かなり認定資格の手続が面倒だったのですが、簡易認定 をやろうということで運動しまして、それが通りました。具体的にいえば、年間の活動収入が800万円以下の団体の場合は、非常に簡易に手続ができるという ことです。ただし、3000円の会費を払うメンバーが50人はいてほしいということなんです。これを1000円にしてほしいとか、50人は多すぎるとか、 いろいろな議論もあったのですが、やはりNPO活動が本当に国民の理解をより広く受けるには、年間3000円を出す人が50人くらいバックアップしている 団体ぐらいでないと、税の減免対象にするというのはなかなか困難だなと、それぐらいの支持者を集めてくださいよ、というような気持ちで政府側と手を打ちま した。
古谷)それは動いているのですか。
加藤)今度の通常国会の法案がかかってきますけれども、来年から施行になり、今年の4月1日申請の団体以降から適用の予定ということになっています。 やはり、これからは地域活動を重視していくことが必要だと思います。最近、わけの分からない事件が多いですよね。この前も京都で学習塾の先生をしていた大 学生が小学生を殺した事件がありました。こういう事件の根本的な問題は、心の成長の問題だと思うんですね。家庭の中の問題ですが、いま家庭の中での教育力 が落ちたわけです。それで、学校の先生方の教育力にあまり多大な期待を寄せても、もう限界です。やはり地域でその部分を補っていく。地域でみんなが寄り 合って、そこで、人間と人間の付き合いの中から、子どもや青年を成長させていくという部分がないと、この社会は崩れると思いますね。倫理観も希薄になって きていますね。ですから、その活動を強くしていってもらいたい。そのひとつのきっかけは、私の意見ですが、学校区だと思っています。
古谷)単位がということですか。
加藤)そうです。子どもの教育を通じて一緒になるというのが学校区ですが、それ以外に、特定の目的で社会のために尽くそうとするNPOだと思いますね。 JCがここ2〜3年必死に活動して東京23区に「1%条項」を入れたいと頑張っている、まだ、実現していないようですが、市川市は実現して、非常に面白い ことになっている。ですから、私も地元で説得しているのですが、たとえば世田谷でNPO1%条項の条例が通って、それがきっかけでNPO活動が増えていっ てほしいなあと、JC及びJCのOBの皆さんの活動に期待したいと思っています。
古谷)1%制度はそれが当たり前にできる仕組みとともに、先ほど先生がおっしゃったように控除となる寄付文化というのが制度的にやりやすくなってくると、 だいぶイメージが変わってくると思うんですね。 加藤)そうですね。
古谷)1%制度だけがいいというわけでは決してないですし、あらゆる部分で扶助、共助的なところをつくっていけるのがNPOだったり、地域だったりするん ですね。やっぱり地域のあり方というのは、すごい速さで核家族化が進んで、もっともっと、今は細分化されていって、家の中でも孤立状態みたいな家庭が多い じゃないですか。それを打破していくのは、地域の、今の時代にあうようなネットワークや仕組みというのということだと思います。私たちは、なんとなく、昔 の、よき昭和のころの地域コミュニティーというのをイメージしがちですが、やはり今の時代にあったような形というのが、いまのひとつのNPOだと思うので す。そういう形でNPOが育っていくような土壌を整備するために、政府をはじめ行政の方々にも広がりをみせられるような制度をつくってもらいたいし、われ われ市民も意識をもってそういうところに参画して、ちょっとでも自分たちが入ってくとだいぶ、変わって来ると思うんですよ。
加藤)変わってきますよ。
古谷)名刺にも書いてありますけど、「他人依存から自立型社会を目指そう」というのが大きなテーマなんですけれども。
加藤)いいですね。
古谷)まさに、もう、この言葉に代表されるような状態がいまの時代背景なのかな、他人依存型の社会なのかな、だから、いろいろ問題が起こってくるのかなあ と。やはり、NPOをうまく利用しながら、地域貢献をして変えていくべく、われわれもNPOを作りましたので、今後もいろいろな形で今後もアドバイスをい ただければと思います。 本日はお忙しい中、ありがとうございました。